BIS 講習に参加し、北方型住宅の熱環境計画について学んできました。
このブログで、学んだ知識を整理し、今後の設計に活かしていきます。
自然温度差(Δtn)=(日射取得熱+内部発生熱)/総熱損失量qa
室内取得熱(日射取得熱+内部発生熱)によって室温は外気温よりも高くなります。この内外の温度差を自然温度差という。
基準温度=暖房設定温度ー自然温度差
寒暑感を決める6要素
環境側の4要素
- 空気温度(気温)℃
- 相対湿度(湿度)%
- 平均放射温度(周壁平均温度)℃
- 気流速度
人体側の2要素
- 着衣量clo
- 代謝量(運動量)Met
平均放射温度〜周壁温度、放射温度、表面温度、英語MRT
室内の快適温度確保するには
人の周囲の空気温度や平均放射温度が皮膚表面温度より低い時、対流・放射による熱伝達が大きくなるので、放熱量が代謝量を上回ります。窓温度が10℃以下になると暖房していても強い冷放射や冷気流(ドラフト)が発生し「寒さ」の不快感を感じます。
平均放射温度 目標値
冬20〜25℃
夏26〜28℃
作用温度
人は平均放射温度や気流速度によって体感温度はことなります。比較するために作用温度があります。
作用温度OT=(室温TA+平均放射温度Tr)/2 〜簡易式
平均放射温度と室温を近づける事が快適な温熱環境になる事がわかります。作用温度と室温の差が小さい程、快適になります。
人の寒暑感をしめす PMV
下記7段階で示します。
-3 とても寒い
-2 寒い
-1 やや寒い
±0 寒くも暑くもない
+1 やや暑い
+2 暑い
+3 とても暑い
上記の不満足者率 PPD
PMVは人の不感蒸泄・発汗の影響を評価できていません。SETが新たに評価として開発されました。
SETは、任意の熱環境における寒暑感が仮想の標準環境(空気温度=平均放射温度、相対湿度50%、気流速度0.1m/秒、代謝量1.0Met(椅子軽作業)、着衣量0.6clo(軽装)の寒暑感と等しくなる時の空気温度(=平均放射温度)と定義されています。
SET 22〜26℃が快適
発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失をいう。皮膚からの蒸散のみを指すという意見もある。不感蒸泄の量は,条件により大きく変動するが,常温安静時には健常成人で1日に約900ml(皮膚から約600ml,呼気による喪失分が約300ml)程度である。発熱,熱傷,過換気状態などで増加する。
人体エクセルギー消費速さ
〜体温調整に要する熱ストレス
平均放射温度の高低によって「寒さ」や「暑さ」を感じる場合もある。
平均放射温度の高い方が人体内部での体温調整機能に余分なストレスがかからない(人体エクセルギー消費速度が小さくなる)
この事が放射(輻射)式暖房が、対流式暖房よりも「心地よい」とされる傾向を表しています。
つまり弊社が多く作用している1階部分の全面コンクリート埋設床暖房(放射式暖房)は、平均放射温度を維持しするのに理想的である事がイメージできます。
開口部の断熱性
開口部の断熱性を高める事が平均放射温度の低下を抑え、作用温度(室温=平均放射温度)を20℃〜22℃程度に維持できる結果になる。
開口部の断熱性を高める
①Low-e(低放射)ガラスの採用
②Low-eガラスの多層化
③樹脂製サッシ・木製サッシの採用
開口部のさらなる断熱
- 断熱戸
- 断熱カーテン・断熱ブラインド
- 断熱シャッター
- 太鼓張り障子・断熱障子
- 内窓付加
窓と結露
表面結露対策
- 高断熱窓システム※を採用する
- 窓の下に放熱器を設置する
- 窓を多重化する
- 夜間にカーテンの上下・左右を閉鎖する
※Low-e複層ガラス、Low-e三層ガラス、ダブルLow-e三層ガラス、真空ガラス+木製または樹脂サッシ
窓を多重化する場合は、層内結露に注意
防暑・涼房の計画
涼房〜冷房とは異なる爽やかな涼しさを造る手法
以下防暑・涼房計画の要素技術 優先順位順
- 日射遮蔽
- 高断熱
- 昼間 通風
- 常時開放型 換気
- 夜間 換気
- 緑・水の活用
①日射遮へいの方法>
窓の屋外で行う
②庇の計画
太陽位置図を使用し太陽高度、太陽方位角を確認する。
③パーゴラ・オーニング・簾の計画
④遮熱型Low-E複層ガラス
開口部の日射侵入率=窓ガラスの日射熱取得率×日射遮へい材の日射遮へい係数×庇の日射遮へい係数
下記表を確認すると、遮蔽材有っても、ガラス性能が良くても、庇の様な日除け対策がないと、日射遮へい効果は変わらない。庇が以下に有効な日射遮へい対策である事がわかります。
通風・換気
涼房を実現するためには、日射遮へいと組み合わせて通風・換気を行うと効果的です。
通風は、住まい手の生活領域に風を通す事、人体に風を直接当てることで「涼しさ」を得る夏の住まい方です。
換気は、室内空気を新鮮外気に入れ替える事(交換)を意味します。汚染空気を速やかに排出し、新鮮な外気を給気します。換気は夏だけでなく春夏秋冬、24時間求められます。
夜間換気
夜間外気温が低くなる時に換気を行い、日中に「涼しさ」を得る手法を「夜間換気(ナイトパージ)」と呼びます。
◯緑を活かす涼房
緑のカーテン
日射遮へいだけなく、重なり合う葉が風でなびいて、涼し気な雰囲気を出す。
◯水を活か涼房
水による蒸発冷却を活かす方法。
建物敷地に菜園・ビオトープを設け、雨水を敷地に浸透させておく。
雨水タンクを利用し、雨水を貯蓄し、打ち水や植物への水やりに使う事ができる。
◯北側を開く
窓の高断熱化が進み北側窓を涼房として利用できるようになった。
北側は、南側とくらべひんやりとした空気が溜まっていて「冷たさ」を感じる事があります。北側の冷放射、冷気をしつないにとりこみ、冷却源として利用できます。
日中、日陰になる建物の北側に土壌があれば、樹木を植え冷気をつくる事ができます。樹木は光合成を行う時に、蒸散を積極的に行い木周辺では上昇気流が発生し、「涼しさ」「爽やかさ」を感じます。
気密住宅と換気設計
<住宅の空気汚染物質>
◯人から発生するもの
水蒸気、二酸化炭素、タバコの煙(喫煙者の場合)等
◯暖房機器・ガスレンジから発生するもの
二酸化炭素、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物等
特に開放型の燃焼機器(アラジンストーブのような)は、
大量の燃焼ガスが全て室内に発生しますので、
※燃焼ガスとは?
一酸化炭素(CO)
窒素酸化物(NOx)
揮発性有機化合物(VOCs)
この事から高気密住宅としては使用すべきではありません。
の生成機構について述べ,“知覚が難しい”燃焼排ガス
◯建材・家具から発生するもの
揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド、トルエン
キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン等
濃度指針値があります。
住宅はこの様な汚染物質を屋外に排出する必要があります。
換気量が不足すると
水蒸気濃度が上昇し結露・カビが発生します
化学物質等の濃度上昇は、健康被害を引き起こします
この事が原因で居住者が健康被害(シックハウス症候群)
がおこり問題となり2003年改正 建築基準法でこの対策として、
機械換気設備が義務化となりました。
ただ換気設備は設置するのではなく、適正な量の換気が
行われなければならないという事です。24時間しっかりと
適切な換気を行うため、居住者にとって換気設備が不快に
感じないよう配慮が必要です。
騒音や気流感の防止などの技術的な対応と、居住者への換気の
必要性と運用方法の的確な説明を建築側が行うことが大切です。
換気装置は運転されていても、換気がされてない事があります。
原因3つ
1.設計不良
2.施工の不良
3.維持管理の不備
◯必要換気量
換気回数0.5回/h以上の有効換気量が必要
二酸化炭素濃度1000ppm以下とする換気量の
目安として一人あたり30㎥/hが必要
新築時には最大換気量を維持すべきですが、化学物質対策を十分行い
新築後1年以上経過した住宅では、寒冷期など過換気による影響が大きい
季節には生活に応じて換気量をコントロールできる事も大切です。
◯換気の種類
局所換気(部分換気の使用時のみ換気)
全般換気(24時間住宅全体を希釈換気)
第1種換気(機械排気・機械給気)
熱と湿気を回収する全熱型は、冬季間の過乾燥を緩和する。
浴室などの高湿空気を排気すると室内で結露が生じたり
ドレーンを備えてないものは水滴が落ちたりします。
また、水分と一緒ににおいも回収されて室内に戻るといわ
れています。その事から浴室、トイレは、別途換気する必要がある。
熱だけを回収する顕熱型
水分の発生が多く湿度を下げたい空間に使われ、浴室やトイレからも排気できます。
第2種換気(自然排気・機械給気)
第3種換気(機械排気・自然給気)
ファン種類
軸流ファン(プロペラファン、ダクト抵抗が大きい、風の影響をうける)
遠心ファン(風の影響をうけにくい、ダクト抵抗が少ない)
ファンモーター
DC(直流・消費電力小さい・風量制御性利点あり)
AC(交流・消費電力大きい)
デマンド換気
水蒸気や二酸化炭素などの濃度に応じて換気量を自動制御する事。